「の負け」
「う〜〜…もう一回!」
「あかん、もう終いにしよ。疲れたわ」
テーブルの上に散らばったトランプを、手元に集めながら着流し姿の蓬生をちらりと見る。
「……もう一回…」
「そないな顔してもあかん」
「意地悪…」
「お褒めに預かり光栄の至り」
机に頬杖をついて、にっこり微笑まれてはこれ以上なにも言えない。
「じゃあ、また明日遊んでくれる?」
「子供みたいやね」
「……嫌?」
「嫌やないよ。あんたと遊ぶんは、俺も楽しいし」
ケースにトランプを戻すと、蓬生の横に立って彼の首に両手を回して抱きしめる。
「あたしも蓬生と遊ぶの楽しいから好き!!」
「ありがとさん…あれあれ、」
「ん?」
「ほどけとるよ」
そういうと蓬生があたしの方へ向きを変え、襟元へと手を伸ばしてきた。
「折角可愛いらしい服着とるんやから、ちゃんとせなあかんよ」
「はーい…」
白くて長い指が、リボンを持つ。
「あんたは不器用やから、たまに縦になっとったりするんが面白いわ」
「…どーせ」
「膨れんでもええよ。いつでも俺が結んだるし…ほら、出来た」
きゅっと結ばれたリボンを見て、お礼を言う。
「どうもありが…」
けれど、その言葉は途中で止まる。
なぜかと言えば、結んだリボンを蓬生がほどき始めたからだ。
「蓬生?」
「お礼の言葉やのうて、別のもんがええなぁ」
「…ちょ、蓬生!?」
リボンをほどいた手が、そのままボタンを外し始めたのに気づき慌てて身を捩る。
「もう少しあんたと遊びとうなったわ」
「あ、遊び違いでしょ!?」
「本気の遊びや…がええ声で鳴いて、求めてくれるにはどうすればええか。あんた相手は案外難しいんやで?…すぐ、恥ずかしがるんやから」
「疲れたって言った!」
「あれはあれ、これはこれ」
あっさり言いながら、服の下から入り込んだ手が背中から素肌をたどり、逃げられないよう絡め取られる。
「…しても、ええやんな?」
にっこりと微笑むは、まるで魔物のように妖しい色香を放つ愛しい男。
断れる可能性など、万に一つもない。
けれど、ただ魔物に魅入られるだけでは悔しくて、つい強気な台詞が口から漏れてしまった。
「好きに、すれば…いいっ…」
「ほな、好きにさせてもらおか…後悔しても、知らんよ」
蓬生の口元がわずかに上がり、そのまま噛みつくように口づけられる。
そのキスだけで、自分の強気な発言を後悔したのは…言うまでもない。
蓬生が着流しで、色香に溢れて妖艶に微笑むと…絶対落ちると思う。
ってか、確実に私は落ちる…(笑)
2010/09/09